僕の一番好きな新書は、この本です。2007年に発刊されたこの本を超えるものに、僕はまだ出会えていません。もしかしたら、出会っているのかも知れませんが、あまりにこの本が好きで、それを超えられないのです。とっても良い本です。
一番好きな部分は、第9章 動的平衡とはなにか 「砂上の楼閣」(p、152〜)この部分はまるで詩歌を聞いているような気分になって、波の音まで聞こえてきそうなほど情緒的です。この本のタイトル以上のインパクトがあります。
ちょっと引用させていただきますね。
遠浅の海辺。砂浜が緩やかな弓状に広がる。海を渡ってくる風が強い。空が海に溶け、海が陸地に接する場所には、命の謎を解く何らかの破片が散逸しているような気がする。だから私たちの夢想もしばしばここからゆたい、ここに還る。
ちょうど波が寄せてはかえす接線ぎりぎりの位置に、砂で作られた、緻密な構造を持つその城はある。ときに波は、深く掌を伸ばして城壁の足元に達し、石組みを模した砂粒を奪い去る。吹きつける海風は、城の望楼の表面の乾いた砂を、薄く、しかし絶え間なく削り取り去っていく。ところが奇妙なことに、時間が経過しても城は姿を変えていない。同じ形を保ったままじっとそこにある。いや、正確にいえば、姿を変えていないように見えるだけなのだ。(本編に続く)
ここから福岡伸一先生の「動的平衡とは何か」という講義に入っていくのであるが、これほど情緒的な文章は読んだことがないし、一度読んだだけで取り憑かれてしまった。こういう文章が書ける人間になりたいので、日々努力している。
とにかく、すごく良い本なので読んでもらいたい。
『生物と無生物のあいだ』内容紹介。
生命とは、実は流れゆく分子の淀みにすぎない!?
「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、いま分子生物学はどう答えるのか。歴史の闇に沈んだ天才科学者たちの思考を紹介しながら、現在形の生命観を探る。ページをめくる手が止まらない極上の科学ミステリー。分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える!
【怒濤の大推薦!!!】
「福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は希有である。サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す。」――茂木健一郎氏
「超微細な次元における生命のふるまいは、恐ろしいほどに、美しいほどに私たちの日々のふるまいに似ている。」――内田樹氏
「スリルと絶望そして夢と希望と反逆の心にあふれたどきどきする読み物です! 大推薦します。」――よしもとばなな氏
「こんなにおもしろい本を、途中でやめることなど、誰ができよう。」――幸田真音氏
「優れた科学者の書いたものは、昔から、凡百の文学者の書いたものより、遥かに、人間的叡智に満ちたものだった。つまり、文学だった。そのことを、ぼくは、あらためて確認させられたのだった。」――高橋源一郎氏
【第29回サントリー学芸賞<社会・風俗部門>受賞】
【第1回新書大賞受賞(2008年)】
あわせてよみたい凄い本を紹介します。