この本を描いたヨシタケシンスケさん。お母さんを長い闘病生活の末亡くし、お父さんを突然死で亡くしたんだそうです。準備された死と突発的な死。彼は、死についてもっともっと向き合って話し合う時間がみんなにも必要だと強く感じたそうです。
その彼をさらに強く突き動かしたのが東日本大震災です。僕も強く感じましたが、すべてのものが永遠ではなく突然に終わってしまうということなのです。そんな彼の感性を絵本の中で思い切り表現したのがこの絵本『このあと どうしちゃおう』です。
おじいちゃんを亡くしたばかりの男の子。
彼はある日、おじいちゃんの部屋で一冊のノートを見つけます。
「このあとどうしちゃおう」
そう書かれたノートには、自分が将来死んでしまったら、どうなりたいのか、どうしてほしいのかが書いてありました。
ピザ屋さんもいいな、クラゲもいいな。生まれ変わったらなりたいもの一覧。
天国ってこんなところにちがいない。テーマパークのような予想図。
こんな神様がいてくれたらいいな。いろいろな神様たち。
ナゾナゾが書いてある!?ころころ転がっちゃう!?建ててほしいお墓のデザイン。
おじいちゃんの絵と文字でいきいきと描かれる、ユーモアたっぷりな天国の姿。
それを読んで、男の子はとってもわくわくしてきました。
「ぼくも天国に行くのが楽しみになってきた!
おじいちゃんは、死ぬのが楽しみだったんだろうか?」
でも、ふと男の子は考えるのです。
「ちょっと待てよ。もしかしたら、逆だったのかもしれない─」
大ヒット作『りんごかもしれない』、『ぼくのニセモノをつくるには』に続く、ヨシタケシンスケさんが独特の視点で描く「考える絵本」!
『りんごかもしれない』で目に見えるものについて、『ぼくのニセモノをつくるには』で自分自身について考えることを描いたヨシタケシンスケさんが、今作で描くのは「生きることと死ぬこと」。
過去作に劣らない、奇抜でおもしろい発想でいっぱいの一冊です。
「豊かな世の中とは、どんなテーマでも品のあるユーモアで、きちんとふざけられる世の中のこと」
本作についてのインタビューでそう語るヨシタケさんの言葉通り、生と死をテーマにしているのにまったく重たくなく、天国に思いをはせるおじいちゃんの数々のアイデアが、おかしくてかわいらしい作品です。
とくに、「いじわるなアイツは、きっとこんな地獄にいく」と題された地獄の世界の予想図がとっても愉快!
じわじわとイヤなことばかりで、「たしかにこれはイヤだな~」と納得してクスクスさせられます。
おじいちゃんと同じように、「このあとどうしちゃおう」ノートを作ろうとする男の子。
ところが、いざ何を書こうかと考えはじめると、今の自分に必要なのは別のノートだと気づきます。
「自分が死んじゃったあとのことを考えようとすると、今生きているうちにやりたいことがいっぱいあることにきづいた」
公園と男の子とを描いた最後のページ。
おじいちゃんの「このあとどうしちゃおう」ノートを読んだ人にだけ、その光景の中に、男の子を見守るおじいちゃんの姿が見えるんです─
(堀井拓馬 小説家)
最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。感謝です。