フミヒロの読書記録~良書で人生を変えよう~

良い本を読んで、思考と行動を変えましょう。僕の読んだ本と読みたいお勧め本を紹介していきます。

【読了】平野啓一郎「空白を満たしなさい」

平野啓一郎さんの「空白を満たしなさい」読了しました。まさに足元がぐらつくような、スリリングな展開の感動長編小説で、約500ページほどのボリュームを年末年始でじっくり楽しむことができました。今年は実に幸先の良いスタートです。

彼のプロフィールを少しだけ紹介しますね。芥川賞を受賞した時に「茶髪の芥川賞作家」として世間を騒がせました。この頃もそうですが、芥川賞はハードルが高かったので、恐ろしい若手が出てきたと思ったことを印象に残ってます。

1975年愛知県生まれ。北九州市で育つ。京都大学法学部卒。大学在学に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『一月物語』、『葬送』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『ド-ン』(ドゥマゴ文学賞)、『空白を満たしなさい』、『モノローグ(エッセイ集)』、『ディアローグ(対談集)』、新書『本の読み方―スローリーディングの実践』、『私とは何か 「個人」から「分人」へ』など。最新作は『透明な迷宮』。

 

平野啓一郎空白を満たしなさい

 

 

空白を満たしなさい

 

小説の内容紹介

 ある日、勤務先の会社の会議室で目覚めた土屋徹生は、自分が3年前に死亡したことを知らされる。死因は「自殺」。しかし、愛する妻と幼い息子に恵まれ、新商品の開発に情熱を注いでいた当時の自分に自殺する理由など考えられない。じつは自分は殺されたのではないか。とすれば犯人は誰なのか、そして目的は? 記憶から失われた自らの死の謎を追求していく徹生が、やがてたどりついた真相とは・・・? ミステリー仕立てのストーリーを通し、自殺者3万人を超える現代の生と死、そして幸福の意味を問う傑作長編小説!講談社現代新書『私とは何か 「個人」から「分人」へ』と併せて現代のテーマに向き合う注目作。モーニング連載の話題作。

 

章別構成

  第一章  生き返った男
  第二章  人殺しの影
  第三章  惑乱の渦中へ
  第四章  過去が明るみに
  第五章  茫然自失
  第六章  決定的な証拠
  第七章  楽園追放
  第八章  勝者なき戦い
  第九章  真相
  第十章  夢のような一時(ひととき)
  第十一章 空白を満たしなさい

空白を満たしなさい

空白を満たしなさい

 

 

「分人」という考えを解説します。

この本の中には「分人」という言葉が出てきます。聞き慣れない言葉です。本文にその内容をとてもわかりやすく解説した会話文(p、326)がありますので、そこを引用させていただきます。皆さんと理解の共有が出来ると思います。

「実は私たちも、人格という考え方は、適当でないと考えてるんです。思考方法だとか、ライフスタイルだとかまで考え出すと、それではうまく捉えきれないですから。------私たちはその対人関係ごとの色んな自分を<個人>に対して<分人>と呼んでます。分数の分に人。個人が整数だとすれば、分人は分数のイメージです。個人は一人、二人と数える。その一人々々の中にまた、複数の違った分人が存在している。土屋さんの中にも、例えば、奥さんとの分人が3/10、子供との分人が3/10、マンションのお隣さんとの分人が1/10、・・・とか、色々あるでしょう?分母は何でもいいんですが。」

  僕もここの部分はとっても共感できるのです。ある場所、あるコミュではAという人格で全体のバランスを保っている自分の人格が、他の場所ではBと、全く違うものだったりすることなんて事ありますよね。

人格から、生と死までも考える。

読み進めることで、壮大なテーマにまで挑んでいけることが小説を読む醍醐味です。今回の平野さんの小説にも、その面白味があります。一度死んで生き返った主人公の自殺に対する真相究明をしていくうちに辿り着くものは何なのでしょう。

それは勿論「真実」とか「真相」なのでしょうが、そこに行きつくまでに「生と死」「生活」「家族」「人間としての人格」などといった人間の根源を問うものを明らかにして自分の中を旅していく必要があるのです。

 この内面に向かっての旅は、自分に重ね合わせると楽しいですし、しっかりと考えることも出来るんです。自分の人格、生と死なんて考える機会がありませんからね~たまたま、このテーマに触れるような本が続いて楽しいです。

でも、一番大きな問題「どうして生き返ったのか?」「誰がどういう選択で生き返りをさせたのか?」ということには触れていないですね~もしかして、ここはまた別のステージで展開されるのかも知れませんね。楽しみです。